プロローグ
あるとき、InstagramにDMが届きました。
「将来フリーランスになる希望はありますか?」
送り主は「20代でAIを使って起業!」という紹介文のアカウント。技術への関心は本物のようだったので、フォローバックした直後の出来事です。
「いや、もうフリーランス(会社経営)ですが」
「もしよかったら、私のフリーランス塾に入りませんか?」
「だから、すでに独立しているって…」
「なにかあったらご相談ください!」
相手のプロフィールも、返信の文脈も、一切読んでいない。おそらくAIか自動化ツールを使った機械的なテンプレートだろうと気づいた瞬間、静かな怒りと同時に、深い落胆を覚えました。
これが彼らの言う「最先端のAI活用」なのか、と。
技術を「養分集め」の道具にする害悪
ある程度の知識や技術を持っている。それ自体は素晴らしいことだ。しかし、その技術を「目の前の人の課題解決」ではなく、「情報弱者からの搾取」に使うとしたら、どうだろうか。
「AIで月収〇〇万!」という煽り文句。生成AIを真剣に業務改善に活かし、地域の中小企業の現場で汗をかいている人間にとって、これはただのノイズでしかない。視界を濁し、本質的な議論を遠ざける害悪だと、私は断言する。
技術は手段だ。その手段が向かう先に、「人の課題を解決する」という目的があるかどうか。そこが本質であり、すべての分岐点だと思っています。
「大義」があれば「手段」は選ばなくていいのか?
「日本をAI先進国にする」という大義を掲げるコミュニティがいくつかある。
その志は、本物だと思う。AIの民主化を目指し、多くの人に技術を届けようとする姿勢には、共感する部分もある。しかし、そのための集客手段が「マネタイズで釣る」ことだとしたら、どうだろうか。
「稼げた!」という煽りを大量に発生させ、結果的に数人の「本物のAI人材」が育てばそれでいい——という考え方は、本当に社会を良くしているのか。
ノイズが増えるほど、真剣にAIを学ぼうとする人の視界が濁る。現場で困っている経営者が「どうせ怪しい話だろう」と距離を置く。大義の旗の下で、実務家が一番必要としている「信頼」が、静かに毀損されていく。
これは実務家としての、強烈な疑問です。
ノイズを遮断し、「優しいDX」を現場に届ける
だからこそ、私はコミュニティの「本質的な部分」——純粋な技術情報や最新の動向——だけを抽出し、マネタイズのノイズは完全にシャットアウトすることにしています。
私たち実務家がやるべきことは、SNSでフォロワーを煽ることではない。
ある地方都市の中小企業様と関わる中で、改めてそれを確信しました。そこにある中小企業の多くは、AIどころか、DX化そのもので苦しんでいます。「Excelをクラウドに移すだけでいいのに、怖くて踏み出せない」「新しいツールを入れたら、ベテランスタッフが混乱した」という声が、至る所に転がっています。
現場に入り込み、泥臭く「業務の棚卸し」を行い、一番アナログで不器用なスタッフでも「これならできる」と思えるルールを、一緒に作る。
それが、私の言う「優しいDX」です。
エピローグ
薄っぺらい情報を拡散させてSNSのフォロワーを増やすことよりも、目の前の一社が「少し楽になった」と感じる瞬間の方が、ずっと重いと私は思っています。
すべての人が情報に強いわけではありません。取捨選択は当然、読み手にあるのかもしれません。だからといって、物事の本質を見誤らせるような情報を大量に発信することを「是」とする風潮に、一石を投じたいと思い、本稿をまとめました。
答えは、出ています。




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