AIバブルは3年で終わる。爆速開発の先にある「やさしいDX」の生存戦略

思考法

【プロローグ】

先日、情報収集のために東京ビッグサイトで模様されたAI・DX 展に赴きましたが、驚くほどの来場者(主催者発表は三日間で延べ51,370名!)、そして展示は「AIでの業務改善・スピードアップ」一色。

最近、複数の生成AI(ClaudeやGemini等)を適材適所で連携させる「AIオーケストレーション」を用いて、自社の開発やプロトタイプ制作を行っています。

そのスピードは、正直に言って異常です。以前なら数週間、数ヶ月かかっていた要件定義からデプロイまでのプロセスが、数日、あるいは数時間で完結してしまう。複雑な要件のWebアプリケーションを驚くほどの短期間で形にし、実務に投入する。それが今の現実です。

しかし私は、この「爆速で作れること」自体を、自社の最大の武器だとは捉えていない。

【AIバブルの終わりを、誰もが薄々知っている】

急成長している、あるスタートアップ企業の代表と情報交換をしたとき、彼は静かにこう言った。

「このAIバブルも、長くて3年ですよね」

全く同感だった。

今は「AIを使って爆速で開発できる」こと自体が先進的であり、価値になっている。しかし、AIツールは猛烈な勢いで民主化されている。3年もすれば、誰もがAIを使いこなし、システムを速く安く作れる時代が確実にやってくる。

その時、スピードや先進性だけを売りにしていた「石」は淘汰され、本質的な価値を持つ「玉」だけが残る。

では、AIの民主化以降も生き残るシステム、そして開発者の「思想」とは何か。

【現場は、いつも人間的だ】

私はかつて、BPOの現場でリーダーSVやプロジェクトマネージャーを務めていた。そこで経験した二つの話をしたい。

ある時、RPAのデータを手作業で加工する単純作業のフローがあった。スタッフが楽に処理できるよう、ショートカットとマクロを組み合わせた「3アクションで完結する仕組み」を構築した。

ところが問題が起きた。作業が単純で快適になった結果、スタッフが「寝てしまう」事象が頻発したのだ。

通常の管理者なら「寝るな、集中しろ」と怒るか、厳しいアラートを仕込むだろう。しかし私は割り切った。人間は単調な作業をすれば必ず眠くなる。それは仕様だ。

「寝てしまうこと」を禁止するのではなく、「ハッとして起きた時のリカバリ」を志向した。手順を間違えた場合はその行をスキップし、後から空欄だけを処理できるようにツールを改修した。結果として、スタッフは安心して取り組めるようになり、処理スピードと精度はむしろ向上した。

【リカバリボタンが、チームを救った】

別のチームでの話だ。

ナレッジを蓄積・チェックする高度なツールを開発した際、PC操作が苦手な数名のスタッフが、手順を間違えてデータを壊してしまうことがあった。チーム内に陰口と不穏な空気が漂い始めた。

ここでも、操作を間違えるスタッフを責めることはしなかった。その代わり、間違えた時に一瞬で元に戻せる「リカバリボタン」をUIの目立つところに設置した。

誰も嫌な思いをすることなく、カオスは静かに収束し、チームワークは守られた。

【「やさしいDX」だけが、残る】

これらの経験から学んだことは一つだ。

「システムに人間を合わせる」のではなく、「人間の弱さやカオスを前提に、システム側で優しく包み込む」こと。

AIがどれだけ進化し、コードを瞬時に書けるようになっても、「人間は寝る」「人間は間違える」「人間は傷つく」という現場のリアルは変わらない。カオスな感情や複雑な人間関係を読み解き、「どうすれば現場の人たちが安心して働けるか」をシステム要件に翻訳すること。それこそが、AIには代替できない人間の仕事だ。

爆速で作ることは、もはや当たり前。

これからの3年、そしてその先に生き残るのは、現場の痛みに寄り添い、リカバリの余白をデザインできる「やさしいDX」の思想だけだと、私は確信しています。

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